残業代未払い完全対策ガイド

未払い残業代の計算方法と請求手順

残業代が正しく支払われていないと感じたら、まず正確な未払い額を把握することが第一歩です。このガイドでは、計算方法から証拠の集め方、請求手順まで詳しく解説します。

2020年4月以降は3年分請求可能労基署への相談は無料遅延損害金も請求可能

未払い残業代の計算方法

基本の計算式

時給 × 割増率 × 残業時間 × 未払い月数 = 未払い総額

時給の算出方法

月給制の場合、まず1時間あたりの賃金(時給)を算出します。

時給 = 月給 ÷ 月平均所定労働時間

※ 月平均所定労働時間 = 年間所定労働日数 × 1日の所定労働時間 ÷ 12

※ 通勤手当・家族手当・住宅手当・臨時の手当は除外

割増率一覧

残業の種類割増率
時間外労働(月60時間以下)25%
時間外労働(月60時間超)50%
深夜労働(22時~5時)25%
休日労働(法定休日)35%
時間外 + 深夜50%
休日 + 深夜60%

※ 2023年4月より、中小企業でも月60時間超の割増率50%が適用

時効(遡及請求の期間)

未払い残業代には時効があります。改正労働基準法(2020年4月施行)により、時効期間が変更されました。

2020年4月1日以降に発生

3年間

改正後の時効期間

2020年3月31日以前に発生

2年間

改正前の時効期間

時効は毎月進行します
未払い残業代の時効は各月の給料日の翌日から起算します。先延ばしにするほど古い分から時効を迎えてしまうため、できるだけ早く行動することが重要です。

具体的な計算例

1

月給30万円・月20時間の未払い残業が1年間

月給300,000円
月平均所定労働時間(年間245日 × 8h ÷ 12)163.3時間
時給1,837円
割増率(時間外25%)1.25
月あたり未払い残業時間20時間
未払い月数12か月

計算式

1,837円 × 1.25 × 20時間 × 12か月

未払い残業代 合計

約550,800円

2

月給40万円・月30時間の未払い残業が2年間

月給400,000円
月平均所定労働時間163.3時間
時給2,449円
割増率(時間外25%)1.25
月あたり未払い残業時間30時間
未払い月数24か月

計算式

2,449円 × 1.25 × 30時間 × 24か月

未払い残業代 合計

約2,203,200円

3

固定残業30時間込みだが実際は月50時間勤務(月給35万円・18か月)

月給(固定残業代含む)350,000円
固定残業時間30時間分
実際の残業時間月50時間
超過分(未払い対象)20時間/月
基本給(固定残業代を除く推定)280,000円
時給1,714円
未払い月数18か月

計算式(超過分のみ)

1,714円 × 1.25 × 20時間 × 18か月

未払い残業代 合計

約771,300円

固定残業代のポイント
固定残業代(みなし残業代)が設定されている場合でも、設定された時間を超える残業分は追加で支払われなければなりません。雇用契約書で固定残業代の金額と対象時間が明記されているか確認しましょう。

あなたの正確な未払い額を計算してみましょう

遅延損害金の計算

未払い残業代には、支払い期日から遅延した日数に応じて遅延損害金(遅延利息)を請求できます。遅延損害金の利率は、在職中か退職後かで異なります。

在職中の場合

年3%

民法第404条に基づく法定利率

(2020年4月以降の法定利率)

退職後の場合

年14.6%

賃金の支払の確保等に関する法律

(退職日の翌日から適用)

遅延損害金の計算式

遅延損害金 = 未払い額 × 利率 × 遅延日数 ÷ 365

計算例:未払い200万円で退職後6か月(180日)経過

2,000,000円 × 14.6% × 180日 ÷ 365

= 約144,000円の遅延損害金

※ 未払い残業代200万円 + 遅延損害金14.4万円 = 合計約214.4万円を請求可能

付加金について
裁判所は、悪質な未払いに対して未払い金額と同額の付加金の支払いを命じることができます(労働基準法第114条)。つまり、未払い200万円の場合、最大で付加金200万円が加算され合計400万円になる可能性があります。ただし、付加金は裁判所の判断であり、必ず認められるわけではありません。

証拠チェックリスト

未払い残業代を請求するためには、実際の労働時間と支払い状況を証明する証拠が必要です。以下のリストを参考に、できるだけ多くの証拠を集めましょう。

1

タイムカード / 勤怠記録

最も重要な証拠です。出退勤時刻が記録されたタイムカード、勤怠管理システムのデータ、勤務シフト表などが該当します。コピーやスクリーンショットを取っておきましょう。会社が開示を拒否した場合は、裁判で開示を求めることができます。

2

給与明細書

支給額、各種手当、残業代の支払い状況を確認できます。基本給と残業代が区別されているか、残業時間と支給された残業代が一致しているかを確認しましょう。最低でも過去2~3年分を保管することが望ましいです。

3

雇用契約書

労働条件(所定労働時間、賃金、手当、固定残業代の有無など)を確認できます。特に固定残業代がある場合は、対象時間数と金額が明記されているかが重要です。

4

就業規則

会社の労働時間制度(変形労働時間制、フレックスタイム制など)や残業代の計算方法を確認できます。10人以上の事業所は就業規則の作成・届出義務があります。

5

メール / チャット履歴

業務メールやSlack、Teamsなどのチャットの送信時刻は、勤務していた時間の証拠になります。深夜や早朝に送信した業務連絡は、残業の有力な証拠です。スクリーンショットやエクスポートで保存しておきましょう。

6

PCログオン・ログオフ記録

パソコンの起動・シャットダウン時刻の記録は客観的な労働時間の証拠となります。Windows のイベントログやMacのシステムログを確認しましょう。ITシステム管理者がアクセスログを保管していることもあります。

7

ICカード入退館記録

社員証やICカードでの入退館時刻の記録も重要な証拠です。ビルの管理会社が記録を保管していることが多く、開示を求めることができます。

8

日記・メモ

自分で記録した出退勤時刻や業務内容のメモも証拠として認められます。手書きのメモやスマホのメモアプリ、日記など、毎日の記録が積み重なることで説得力が増します。今からでも記録を始めましょう。

証拠は在職中に集めるのがベスト
退職後は会社のシステムにアクセスできなくなるため、証拠の収集が困難になります。在職中のうちにコピー、スクリーンショット、写真などで証拠を確保しておくことを強くお勧めします。ただし、社内機密情報の持ち出しには注意が必要です。

未払い残業代を計算する

⚠️ 未払い残業代シミュレーター

過去分の未払い額を概算

時間
ヶ月

未払い残業代の総額(概算)

¥1,040,640

残業時給

¥2,168

月あたり

¥43,360

対象期間

24ヶ月

遅延損害金込

¥1,186,330

※ 遅延損害金は退職後の年14.6%を概算。在職中は年3%。実際の金額は法的助言を受けてください。

請求の手順(6ステップ)

1

証拠を集める

まず、上記のチェックリストを参考に、実際の労働時間を証明する証拠をできるだけ多く集めます。証拠が多いほど請求が有利になります。

目安期間:1~2週間(在職中の場合はすぐに開始)

2

未払い額を計算する

収集した証拠をもとに、時給、割増率、残業時間を確認し、正確な未払い額を計算します。当サイトの計算ツールを使えば簡単に算出できます。

目安期間:数日(計算ツールを使えば即日)

3

会社に請求する(内容証明郵便)

未払い額の計算結果と証拠をもとに、会社に対して正式に支払いを請求します。内容証明郵便を使うことで、請求した事実と日時が法的に証明されます。これは時効の中断(完成猶予)にも有効です。

内容証明郵便のポイント:

  • ・ 請求金額と根拠を明記
  • ・ 支払い期限を設定(通常2週間~1か月)
  • ・ 支払わない場合の法的措置を予告
  • ・ 郵便局の窓口で送付可能(1,500円程度)
4

労働基準監督署に申告する

会社が支払いに応じない場合は、会社の所在地を管轄する労働基準監督署に申告します。労基署は調査権限を持ち、違反が確認されれば是正勧告を行います。相談・申告は無料です。

申告に必要なもの:

  • ・ 証拠書類のコピー
  • ・ 未払い額の計算書
  • ・ 会社への請求書のコピー(内容証明など)
  • ・ 本人確認書類
5

労働審判 または あっせんを利用する

労基署の是正勧告後も解決しない場合は、労働審判あっせんの手続きを検討します。

労働審判

  • ・ 裁判所で行う手続き
  • ・ 原則3回以内の期日で解決
  • ・ 約2~3か月で結論
  • ・ 審判に不服があれば訴訟へ移行
  • ・ 申立て費用:数千円~

あっせん(労働局)

  • ・ 都道府県労働局が仲介
  • ・ 費用無料
  • ・ 1回の期日で調整
  • ・ 強制力はないが迅速
  • ・ 話し合いでの解決を目指す
6

訴訟(最終手段)

上記の手続きで解決しない場合、最終手段として民事訴訟を提起します。訴訟には時間とコストがかかりますが、判決は法的拘束力を持ちます。

訴訟のポイント:

  • ・ 弁護士への依頼が推奨される(成功報酬制の事務所も多い)
  • ・ 期間は6か月~1年以上が目安
  • ・ 付加金(未払い額と同額)を裁判所が命じることも可能
  • ・ 請求額が60万円以下なら少額訴訟も利用可

各ステップの目安期間

ステップ内容目安期間
1証拠収集1~2週間
2未払い額の計算即日~数日
3内容証明郵便で請求2~4週間
4労基署への申告1~3か月
5労働審判 / あっせん2~3か月
6訴訟6か月~1年以上

※ 多くの場合、ステップ3~4の段階で会社が支払いに応じるケースが多いです。

よくある質問

未払い残業代はいつまで遡って請求できますか?

2020年4月1日以降に発生した未払い残業代は3年分まで遡って請求できます。それ以前に発生した分については2年が時効です。改正労働基準法(2020年4月施行)により、時効が2年から3年に延長されました。将来的には5年に延長される予定です。時効は毎月進行するため、早めの行動が重要です。

在職中でも未払い残業代を請求できますか?

はい、在職中でも請求可能です。労働基準法では、残業代の請求は労働者の正当な権利として保障されています。会社が請求を理由に不利益な扱い(解雇・降格・配置転換など)をした場合、それ自体が違法行為となります。ただし、職場の人間関係への影響を懸念する場合は、労働基準監督署への匿名相談や、退職後の請求も選択肢です。

証拠がない場合でも請求できますか?

証拠が少ない場合でも請求は可能ですが、証拠があるほど有利です。タイムカードがなくても、PCのログオン記録、メールの送信時刻、ICカードの入退館記録、同僚の証言、自分で記録した日記やメモなどが証拠になります。また、会社には労働時間を記録する義務があるため、裁判では会社側に記録の開示を求めることもできます。

固定残業代(みなし残業)があっても請求できますか?

はい、固定残業代を超える分は別途請求可能です。例えば、固定残業代が30時間分の場合、実際に40時間残業していれば超過分の10時間分は追加で支払われる必要があります。また、固定残業代制度自体が無効となるケースもあります。具体的には、固定残業代の金額・対象時間が雇用契約書に明記されていない場合や、基本給と固定残業代が区別されていない場合は、制度自体が無効とされる可能性があります。

未払い残業代の請求にかかる費用はどれくらいですか?

労働基準監督署への相談は無料です。弁護士に依頼する場合は、着手金(10万~30万円程度)と成功報酬(回収額の15~25%程度)がかかります。ただし、最近は完全成功報酬制(着手金無料)の弁護士事務所も増えています。労働審判の申立て費用は数千円~数万円程度と比較的安価です。また、法テラスを利用すれば、経済的に余裕がない方は弁護士費用の立替制度を利用できます。

会社が倒産した場合、未払い残業代はどうなりますか?

会社が倒産しても、未払賃金立替払制度を利用できる場合があります。これは独立行政法人「労働者健康安全機構」が運営する制度で、倒産した企業の労働者に対して、未払い賃金の一部(上限あり、最大8割)を国が立て替えて支払います。対象は退職日の6か月前から立替払請求日の前日までに支払期日が到来した未払い賃金(残業代を含む)です。

あなたの未払い残業代を計算してみましょう

月給と残業時間を入力するだけで、3秒で正確な残業代を計算できます。会社の支払い額と比較して、未払いがないか確認しましょう。

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