正社員の残業代計算

月給制の正社員が知っておくべき残業代の計算方法を、具体例とともに徹底解説。 あなたの残業代が正しく支払われているか確認しましょう。

2026年最新の労働基準法に対応

月給制の残業代計算 ― 3つのステップ

1

月給から時給を算出

月給 ÷ 月平均所定労働時間 = 時給

月平均所定労働時間は、多くの企業で160〜173時間です。就業規則を確認しましょう。 一般的に使われる173時間は「(365日−104日休)×8時間÷12ヶ月」で算出されます。

2

割増率をかけて残業時給を算出

時給 × 割増率 = 残業時給

通常残業は1.25倍、深夜残業は1.50倍、 休日労働は1.35倍、月60時間超は1.50倍が適用されます。

3

残業時給 × 時間 = 残業代

残業時給 × 残業時間 = 残業代

残業代は1分単位で計算するのが原則です。「30分未満切り捨て」などは 労働基準法に反する可能性があります。

正社員の残業代計算式(まとめ)

月給 ÷ 173h × 割増率 × 残業時間 = 残業代

※173hは月平均所定労働時間の一般的な値。会社ごとに異なります。

残業の種類と割増率一覧

残業の種類割増率条件時給2,312円の場合
通常残業1.25倍1日8時間 or 週40時間超2,890円/h
深夜残業1.50倍22時〜翌5時の残業3,468円/h
休日労働1.35倍法定休日(週1回)の労働3,121円/h
休日深夜1.60倍法定休日の22時〜翌5時3,699円/h
月60時間超1.50倍月60時間を超えた残業分3,468円/h
月60時間超+深夜1.75倍月60時間超かつ22時〜翌5時4,046円/h

※ 時給2,312円は月給40万円÷173時間で算出。2023年4月より中小企業にも月60時間超の割増率50%が適用されています。

正社員の残業代を計算する

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60時間超の割増(×1.5)にも対応

時間

月の残業代

¥43,353

時給換算

¥1,734

残業時給(×1.25)

¥2,168

年間残業代

¥520,236

正社員の残業代 ― よくある4つの誤解

誤解1:「管理職だから残業代は出ない」

労基法41条の「管理監督者」に該当しない限り、残業代は発生します。 管理監督者の判断基準は以下の3つです。

  • 経営に関する重要な権限・責任がある
  • 出退勤について厳格な管理を受けていない
  • 地位にふさわしい待遇(年収・賞与)を受けている

「課長」「店長」という肩書きだけでは管理監督者に該当しません。 2008年のマクドナルド判決でも、店長に残業代の支払いが命じられました。

誤解2:「年俸制だから残業代は含まれている」

年俸制でも割増賃金の支払い義務は免除されません。 年俸を12で割って月給を算出し、通常の方法で残業代を計算します。

年俸に残業代を含める場合は、固定残業代と同じく「基本給部分」と 「残業代部分」が明確に区分され、対象時間数が明示されている必要があります。 曖昧な場合は、年俸全額が基本給として扱われ、残業代は別途全額発生します。

誤解3:「裁量労働制だから何時間働いても同じ」

裁量労働制でも深夜手当(22時〜5時)休日手当は 発生します。また、みなし労働時間が8時間を超える場合は、超過分の割増賃金も必要です。

例:みなし9時間の場合、毎日1時間分(25%割増)の残業代が固定で発生します。 さらに深夜に及んだ場合は50%割増の深夜手当が別途必要です。

誤解4:「固定残業代があるから追加の残業代は出ない」

固定残業代に含まれる時間を超えた分は、追加で残業代が発生します。 含まれる時間内でも、固定残業代の有効性には条件があります。

  • 基本給と固定残業代が明確に区分されていること
  • 対象となる残業時間数が明示されていること
  • 超過分の差額を支払うことが定められていること

これらを満たさない場合、固定残業代は無効となり、 残業代の全額を別途請求できる可能性があります。

正社員の残業代計算 ― 4つの具体例

1

IT企業エンジニア ― 月給40万円・残業30時間

前提:月給40万円(基本給+諸手当)、月平均所定労働時間173時間、通常残業30時間

Step 1:400,000円 ÷ 173h = 2,312円(時給)
Step 2:2,312円 × 1.25 = 2,890円(残業時給)
Step 3:2,890円 × 30h = 86,700円(残業代)

月額残業代:86,700円(年間換算:約1,040,400円)

IT業界では月30時間前後の残業が平均的です。固定残業代が設定されている場合は、 含まれる時間数と照らし合わせて差額を確認しましょう。

2

営業職 ― 月給50万円・残業40時間(うち深夜10時間)

前提:月給50万円、月平均所定労働時間173時間、通常残業30時間+深夜残業10時間

Step 1:500,000円 ÷ 173h = 2,890円(時給)
Step 2a:2,890円 × 1.25 × 30h = 108,375円(通常残業分)
Step 2b:2,890円 × 1.50 × 10h = 43,350円(深夜残業分)
合計:108,375円 + 43,350円 = 151,725円

月額残業代:151,725円(年間換算:約1,820,700円)

深夜残業(22時〜翌5時)は通常の1.25倍ではなく1.50倍になるため、 深夜に及ぶ営業活動が多い場合は残業代が大きく増えます。 接待や取引先との会食後の作業も、業務命令であれば労働時間に含まれます。

3

若手社員(入社2年目) ― 月給25万円・残業20時間

前提:月給25万円、月平均所定労働時間173時間、通常残業20時間

Step 1:250,000円 ÷ 173h = 1,445円(時給)
Step 2:1,445円 × 1.25 = 1,806円(残業時給)
Step 3:1,806円 × 20h = 36,120円(残業代)

月額残業代:36,120円(年間換算:約433,440円)

新卒・若手社員でも残業代は同じ計算方法です。「研修期間だから残業代が出ない」 「新人は残業代を申請しにくい」という風潮がある場合、それは違法です。 入社直後から労働基準法の保護は適用されます。

4

ベテラン社員 ― 月給35万円・残業70時間(月60時間超を含む)

月60時間超の割増率に注意
2023年4月以降、中小企業を含む全企業で月60時間超の残業に50%割増が適用されています。 60時間までの部分と60時間超の部分で割増率が異なります。

前提:月給35万円、月平均所定労働時間173時間、残業70時間(うち60時間超が10時間)

Step 1:350,000円 ÷ 173h = 2,023円(時給)
Step 2a:2,023円 × 1.25 × 60h = 151,725円(60時間以内分)
Step 2b:2,023円 × 1.50 × 10h = 30,345円(60時間超分)
合計:151,725円 + 30,345円 = 182,070円

月額残業代:182,070円(年間換算:約2,184,840円)

月70時間の残業は過労死ラインに近い水準です。健康面のリスクも高いため、 残業代の計算とあわせて、労働時間の見直しも検討しましょう。 60時間超の部分は通常の25%ではなく50%割増となるため、差額が年間で約24万円にもなります。

業種別 ― 正社員の残業代の目安

業種平均月給平均残業時間推定月額残業代
IT・通信38万円25時間68,641円
金融・保険42万円20時間60,693円
製造業32万円20時間46,242円
建設業35万円30時間75,867円
小売・飲食28万円25時間50,578円
医療・福祉30万円15時間32,514円
運輸・物流33万円35時間83,382円

※ 推定残業代は月平均所定労働時間173時間、通常残業(1.25倍)のみで試算。 深夜・休日・60時間超の残業が含まれる場合はさらに高くなります。 業種別平均値は厚生労働省「毎月勤労統計調査」を参考としています。

正社員の残業代に関するよくある質問

正社員なのに残業代が出ないのは違法ですか?

原則として違法です。正社員であっても労働基準法37条により、法定労働時間(1日8時間・週40時間)を超えた労働には25%以上の割増賃金を支払う義務があります。ただし、労働基準法41条の「管理監督者」に該当する場合は例外です。管理監督者とは、経営者と一体的な立場にある者を指し、単なる「課長」「マネージャー」という役職名だけでは該当しません。

月給から時給を計算する「173時間」とは何ですか?

173時間(正確には173.8時間)は、月平均所定労働時間の一般的な数値です。計算式は「年間所定労働日数×1日の所定労働時間÷12ヶ月」です。例えば、年間休日120日の会社で1日8時間勤務の場合、(365-120)×8÷12=163.3時間となります。会社によって異なりますが、就業規則に記載がない場合は173時間を使うことが多いです。

固定残業代(みなし残業代)が含まれている場合、追加の残業代は出ますか?

出ます。固定残業代に含まれる時間数を超えて残業した場合、超過分の残業代を追加で支払う義務があります。例えば「月30時間分の固定残業代」が含まれている場合、実際に40時間残業したら、10時間分の残業代が追加で発生します。また、固定残業代が有効であるためには、基本給と固定残業代が明確に区分されていること、対象時間数が明示されていることが必要です。

年俸制の正社員でも残業代は出ますか?

出ます。年俸制であっても労働基準法の割増賃金規定は適用されます。年俸を12で割って月給を算出し、そこから通常の計算方法で残業代を計算します。「年俸に残業代が含まれている」という会社もありますが、その場合も固定残業代と同じく、含まれる時間数が明確に定められ、超過分は別途支払いが必要です。

裁量労働制でも残業代は発生しますか?

裁量労働制では「みなし労働時間」が設定され、実際の労働時間に関わらずその時間働いたとみなされます。ただし、みなし労働時間が法定労働時間(8時間)を超える場合は、超過分に対して割増賃金が発生します。例えば、みなし9時間の場合、毎日1時間分の残業代が発生します。また、深夜労働(22時〜5時)と休日労働については裁量労働制でも割増賃金の支払いが必要です。

残業代を請求する場合の時効は何年ですか?

2020年4月以降に発生した残業代の時効は3年です(労働基準法115条、附則143条3項)。将来的には5年に延長される可能性がありますが、当面は3年間が適用されます。つまり、現時点で過去3年分の未払い残業代を請求できます。請求を検討している場合は、タイムカードや業務メールなど、労働時間を証明できる記録を保管しておくことが重要です。

あなたの残業代を計算してみましょう

月給と残業時間を入力するだけで、正確な残業代が3秒でわかります。 会社の給与明細と比較して、未払いがないか確認しましょう。

免責事項・注意事項

本ページの計算例および解説は、労働基準法に基づく一般的な情報提供を目的としており、 法律上のアドバイスを構成するものではありません。

実際の残業代は、就業規則、雇用契約、労使協定(36協定)の内容によって異なります。 月平均所定労働時間は会社ごとに異なり、本ページでは一般的な173時間を使用しています。

具体的な残業代の請求や労働条件に関するご相談は、弁護士・社会保険労務士・労働基準監督署 などの専門機関にお問い合わせください。

本ページの情報は2026年2月時点の法令に基づいています。法改正により内容が変更される場合があります。

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