派遣社員の残業代計算方法
派遣元が支払い義務を負う派遣社員の残業代。正しい計算方法と派遣特有のルールを解説します。
派遣社員の残業代で最も重要なポイント
派遣元と派遣先の責任分担
残業代に関する役割の違いを理解しましょう
派遣元(派遣会社)の責任
- 1.残業代の支払い - 法定の割増賃金を含む給与の支払い
- 2.36協定の締結 - 残業の上限時間を労使間で合意
- 3.雇用契約の管理 - 労働条件の明示と契約管理
- 4.社会保険の加入 - 健康保険・厚生年金・雇用保険
- 5.有給休暇の付与 - 法定の年次有給休暇
派遣先(勤務先企業)の責任
- 1.労働時間の管理 - 実際の勤怠管理と残業指示
- 2.安全衛生の確保 - 職場環境と安全管理
- 3.ハラスメント防止 - 職場でのパワハラ・セクハラ対策
- 4.派遣料金の支払い - 派遣会社への料金(残業代込み)
- 5.業務指示 - 日常的な業務の指揮命令
注意:派遣先が残業を指示しても、残業代の支払い義務は派遣元にあります。 派遣先は派遣会社に対して残業分を含む派遣料金を支払い、派遣会社がその中から派遣社員に残業代を支払う仕組みです。
36協定と派遣社員の関係
残業の上限は派遣元の36協定で決まります
派遣社員の残業は派遣元の36協定に基づきます。派遣先企業がどれだけ残業を求めても、 派遣元の36協定を超える残業はさせることができません。
| 項目 | 原則 | 特別条項 |
|---|---|---|
| 月の残業上限 | 45時間 | 100時間未満(休日含む) |
| 年の残業上限 | 360時間 | 720時間 |
| 特別条項の回数 | - | 年6回まで |
| 複数月平均 | - | 80時間以内(休日含む) |
派遣社員特有の注意点
派遣社員の残業割増率一覧
正社員と同じ割増率が適用されます
| 残業の種類 | 割増率 | 時給1,500円の場合 | 時給2,000円の場合 |
|---|---|---|---|
| 通常残業(法定外) | 1.25倍 | 1,875円/時間 | 2,500円/時間 |
| 深夜残業(22時〜5時) | 1.50倍 | 2,250円/時間 | 3,000円/時間 |
| 法定休日出勤 | 1.35倍 | 2,025円/時間 | 2,700円/時間 |
| 深夜+休日出勤 | 1.60倍 | 2,400円/時間 | 3,200円/時間 |
| 月60時間超の残業 | 1.50倍 | 2,250円/時間 | 3,000円/時間 |
※ 月60時間超の残業割増率1.50倍は、2023年4月から全企業(中小企業含む)に適用されています。
派遣社員の残業代を計算する
👔 正社員 残業代シミュレーター
60時間超の割増(×1.5)にも対応
月の残業代
¥43,353
時給換算
¥1,734
残業時給(×1.25)
¥2,168
年間残業代
¥520,236
派遣社員の残業代計算例
ケース1:一般事務の派遣社員
計算:
残業時給:1,500円 x 1.25 = 1,875円
残業代:1,875円 x 20時間 = 37,500円
通常給与:1,500円 x 160時間 = 240,000円
月収合計:277,500円
派遣元が残業代37,500円を含めて支払います。
ケース2:IT派遣エンジニア(深夜あり)
計算:
通常残業:2,500円 x 1.25 x 25h = 78,125円
深夜残業:2,500円 x 1.50 x 10h = 37,500円
残業代合計:115,625円
深夜残業は通常残業より割増率が高くなります。
ケース3:製造派遣(休日出勤あり)
計算:
通常残業:1,400円 x 1.25 x 15h = 26,250円
休日出勤:1,400円 x 1.35 x 8h = 15,120円
残業代合計:41,370円
法定休日出勤は1.35倍の割増率が適用されます。
ケース4:月60時間超の残業
計算:
60h以内:1,800円 x 1.25 x 60h = 135,000円
60h超過分:1,800円 x 1.50 x 10h = 27,000円
残業代合計:162,000円
月60時間を超える残業は1.50倍の割増率になります。健康面のリスクもあるため注意が必要です。
派遣社員が注意すべき残業トラブル
よくあるトラブルと対処法を知っておきましょう
「派遣だから残業代は出ない」と言われた
派遣先や派遣元から「派遣社員には残業代が出ない」と言われるケースがあります。
これは違法です。派遣社員にも労働基準法が適用され、残業代は必ず支払われます。
タイムシートを改ざんされた
派遣先が残業時間を少なく記録するよう指示したり、タイムシートを修正するケースがあります。
自分でも勤務記録を別途保管しましょう。メモやアプリでの記録も証拠になります。
サービス残業を求められた
「派遣先の社員もサービス残業している」と暗に無給の残業を求められることがあります。
サービス残業は違法です。断れない場合は派遣元に相談し、記録を残しましょう。
契約にない業務の残業を求められた
派遣契約書に記載されていない業務について残業を命じられるケースがあります。
契約外の業務は拒否できます。まず派遣元の担当者に相談しましょう。
トラブルが解決しない場合の相談先
- 1.派遣元の担当者 - まずは派遣会社の営業担当やコーディネーターに相談
- 2.労働基準監督署 - 派遣元が対応しない場合、最寄りの労基署に相談(無料)
- 3.都道府県労働局 - 派遣法に関するトラブルは労働局の需給調整課
- 4.弁護士・社労士 - 未払い額が大きい場合は専門家への相談も検討
派遣料金の仕組みと残業代の関係
派遣料金から自分の残業代がどう計算されるか知りましょう
派遣先企業が支払う派遣料金と、派遣社員が受け取る給与には差額があります。 この差額(マージン)が派遣会社の収益となります。残業代の原資は派遣料金に含まれています。
一般的な派遣料金の内訳例
マージンには社会保険料(約15%)、有給休暇費用、営業利益等が含まれます。 派遣会社は毎事業年度のマージン率の公開が義務付けられています(労働者派遣法第23条5項)。
知っておくと便利
よくある質問
派遣社員の残業代は派遣元・派遣先のどちらが払いますか?
派遣社員の36協定はどちらの会社に適用されますか?
派遣先から残業を指示された場合、断れますか?
派遣社員の深夜残業・休日出勤の割増率はいくらですか?
通常残業(法定外):1.25倍
深夜残業(22時〜5時):1.50倍
休日出勤(法定休日):1.35倍
深夜+休日出勤:1.60倍
月60時間超の残業:1.50倍(2023年4月から中小企業にも適用)
これらの割増率は派遣社員にも同様に適用されます。
派遣契約の時給に残業代が含まれていると言われました。合法ですか?
① 通常の時給と残業代部分が明確に区分されていること
② 何時間分の残業代が含まれているか明記されていること
③ 超過分の残業代が別途支払われること
これらの条件を満たさない場合は無効となり、全ての残業時間について別途残業代が発生します。
派遣社員が残業代を請求するにはどうすればいいですか?
① タイムシートや勤怠記録を正確に保管する
② 派遣元の担当者に残業代の計算内訳を確認する
③ 未払いがある場合は書面で請求する
④ 解決しない場合は労働基準監督署に相談する
未払い残業代は過去3年分まで遡って請求できます(2020年4月以降の未払い分)。証拠として勤怠記録やメールを保管しておきましょう。
関連ページ
免責事項
このページは労働基準法および労働者派遣法に基づいた一般的な情報を提供しています。 実際の残業代は派遣元との雇用契約、派遣先との派遣契約の内容によって異なる場合があります。 派遣契約の内容や個別の事情によって計算結果が変わる可能性がありますので、 正確な判断については派遣元の担当者、社会保険労務士、または労働基準監督署にご相談ください。 本ページの情報に基づいて行われた行動の結果について、当サイトは一切の責任を負いません。