残業代計算と手当
残業代を正しく計算するには、どの手当を含めて、どの手当を除外するか正確に知る必要があります。 労働基準法施行規則第21条に基づき、完全一覧で解説します。
2026年最新の法令・判例に対応。名称ではなく実態で判断する基準を具体例付きで説明。
1. 手当を含む・含まないの判断基準
法的根拠:労働基準法施行規則第21条
残業代(時間外労働手当)の計算基礎となる賃金は、原則として全ての賃金が含まれます。 ただし、労働基準法施行規則第21条で定められた以下の7種類の手当のみ、除外することが認められています。
除外できる7つの手当(限定列挙)
- 1.家族手当(扶養人数に応じて支給されるもの)
- 2.通勤手当(通勤距離・費用に応じて支給されるもの)
- 3.別居手当
- 4.子女教育手当
- 5.住宅手当(住宅費用に応じて支給されるもの)
- 6.臨時に支払われた賃金
- 7.1ヶ月を超える期間ごとに支払われる賃金(賞与等)
重要なポイント
2. 含む手当 vs 含まない手当【一覧比較】
算定基礎に含む手当
残業代の計算に反映される
役職手当
課長手当、部長手当、リーダー手当など
職務手当
業務内容に応じた手当
地域手当
勤務地域による物価差を補填する手当
営業手当
営業職に対して毎月定額で支給される手当
技術手当・資格手当
特定の技術や資格に対する手当
精皆勤手当
出勤率に応じた手当(精勤手当・皆勤手当)
危険手当・特殊勤務手当
危険な業務や特殊な環境での労働に対する手当
調整手当
給与調整のために支給される手当
原則:施行規則第21条に列挙されていない手当は全て含む
算定基礎から除外する手当
残業代の計算に含めない
家族手当
扶養家族の人数に応じて支給される場合のみ除外
通勤手当
通勤距離や交通費の実費に応じて支給される場合のみ除外
住宅手当
住宅費用の実態に応じて支給される場合のみ除外
別居手当
単身赴任など、別居を余儀なくされる場合の手当
子女教育手当
子どもの教育費に対する補助手当
臨時に支払われた賃金
結婚祝金、傷病見舞金、出張日当など
1ヶ月を超える期間の賃金
賞与(ボーナス)、決算手当、四半期報奨金など
注意:除外には「実態が要件を満たす」必要あり
手当の分類早見表
| 手当名 | 算定基礎 | 条件・注意点 |
|---|---|---|
| 基本給 | 含む | 必ず含める |
| 役職手当 | 含む | 除外対象に該当しない |
| 職務手当 | 含む | 除外対象に該当しない |
| 地域手当 | 含む | 除外対象に該当しない |
| 営業手当 | 含む | 固定額を毎月支給する場合 |
| 精皆勤手当 | 含む | 除外対象に該当しない |
| 家族手当 | 条件付 | 扶養人数に応じて支給の場合のみ除外可。一律支給は含む |
| 通勤手当 | 条件付 | 実費精算なら除外可。一律支給は含む |
| 住宅手当 | 条件付 | 住宅費用に応じて支給の場合のみ除外可。一律支給は含む |
| 別居手当 | 除外 | 施行規則第21条で除外 |
| 子女教育手当 | 除外 | 施行規則第21条で除外 |
| 賞与(ボーナス) | 除外 | 1ヶ月を超える期間の賃金として除外 |
3. 名称ではなく実態で判断する
手当の名称は関係ない
残業代の算定基礎に含むかどうかは、手当の名称ではなく、支給の実態で判断されます。 これは労働基準法の解釈として確立された重要な原則です。
「家族手当」の例
除外できる場合
扶養家族1人につき月5,000円を支給(配偶者10,000円、子1人5,000円)
→ 扶養人数に応じた支給のため除外可能
含めなければならない場合
「家族手当」の名称で全社員に一律月15,000円を支給
→ 扶養人数に関係なく一律支給のため算定基礎に含む
「住宅手当」の例
除外できる場合
家賃の50%(上限30,000円)を支給。持ち家はローン返済額の30%を支給
→ 住宅費用に応じた支給のため除外可能
含めなければならない場合
全社員に一律月20,000円の「住宅手当」を支給
→ 住宅費用に関係なく一律支給のため算定基礎に含む
「通勤手当」の例
除外できる場合
定期代の実費を支給、またはガソリン代を距離に応じて精算
→ 実費に基づく支給のため除外可能
含めなければならない場合
「交通費」として全社員に一律月10,000円を支給
→ 実費に関係なく一律支給のため算定基礎に含む
名称が異なる手当の例
「ライフサポート手当」
実態は扶養家族の人数に応じた支給
→ 実態が家族手当のため除外可能
「生活支援手当」
全社員に一律支給で、家族構成に無関係
→ 除外要件を満たさないため算定基礎に含む
実務での確認ポイント
4. 出張手当と残業代
出張手当(日当)の扱い
出張手当に関する疑問は多くの労働者が抱えています。ここでは出張手当と残業代の関係を詳しく解説します。
出張手当は算定基礎に含まない
出張日当は「臨時に支払われた賃金」に分類されるため、 残業代の算定基礎からは除外されます。出張のたびに支給される実費弁償的な性格を持つためです。
例:国内出張日当3,000円/日、海外出張日当5,000円/日 → いずれも算定基礎に含めない
出張中の残業代は別途必要
出張手当を算定基礎に含めないことと、出張中に残業代が発生しないことは全く別問題です。 出張先でも法定労働時間を超えて働いた場合は、残業代の支払い義務があります。
事業場外みなし労働時間制の場合
労働時間の算定が困難な場合、所定労働時間働いたとみなされます。 ただし、上司の指示で管理されている場合は適用されません。
労働時間が管理されている場合
出張先でも勤怠記録がある場合、実際の労働時間に基づいて残業代を計算します。 8時間を超えた分は1.25倍の割増賃金が必要です。
出張の移動時間は残業になる?
出張の移動時間は、原則として労働時間には含まれません。 ただし、以下の場合は労働時間に含まれることがあります。
- 1.移動中に業務を行うことを指示されている場合
- 2.物品の運搬など、移動自体が業務の一部である場合
- 3.会社の指定する交通手段・経路を使う義務がある場合
5. 手当別の計算例(4パターン)
役職手当を含む場合の計算
ステップ1:時給 = 280,000円 / 173時間 = 1,618円/時間
ステップ2:残業時給 = 1,618円 x 1.25 = 2,022円/時間
ステップ3:残業代 = 2,022円 x 20時間 = 40,440円
複数手当がある場合の計算
ステップ1:時給 = 360,000円 / 173時間 = 2,081円/時間
ステップ2:残業時給 = 2,081円 x 1.25 = 2,601円/時間
ステップ3:残業代 = 2,601円 x 30時間 = 78,030円
一律支給の住宅手当がある場合
ステップ1:時給 = 300,000円 / 173時間 = 1,734円/時間
ステップ2:残業時給 = 1,734円 x 1.25 = 2,167円/時間
ステップ3:残業代 = 2,167円 x 15時間 = 32,505円
出張が多い営業職の計算
ステップ1:時給 = 350,000円 / 173時間 = 2,023円/時間
ステップ2:残業時給 = 2,023円 x 1.25 = 2,528円/時間
ステップ3:残業代 = 2,528円 x 25時間 = 63,200円
手当込みの残業代を計算する
👔 正社員 残業代シミュレーター
60時間超の割増(×1.5)にも対応
月の残業代
¥43,353
時給換算
¥1,734
残業時給(×1.25)
¥2,168
年間残業代
¥520,236