残業代にかかる税金の計算方法
残業代は給与所得として課税されます。所得税・住民税・社会保険料の控除額を正しく理解し、実際の手取り額を把握しましょう。
1. 残業代にかかる税金の種類
残業代は「給与所得」として課税される
残業代は基本給と同じく給与所得に分類されます。特別な税率や計算方法があるわけではなく、基本給と合算された総支給額に対して以下の3種類の控除が適用されます。
総支給額が増えるほど控除額も増えるため、残業代がそのまま手取りになるわけではありません。一般的に、残業代の約28〜33%が税金・社会保険料として差し引かれます。
所得税
累進課税制度により、所得が高いほど税率が上がります。
5〜45%
所得金額により変動
住民税
都道府県民税と市区町村民税の合計。全国一律の税率です。
一律10%
翌年6月から天引き
社会保険料
健康保険・厚生年金・雇用保険の3つの保険料です。
約14.75%
労働者負担分の合計
重要:残業代に「特別な税金」はありません
2. 所得税率の早見表(2026年)
所得税の速算表
所得税は累進課税制度を採用しています。課税所得金額が増えるにつれて、段階的に税率が上がります。以下は給与所得控除後の課税所得金額に対する税率です。
| 課税所得金額 | 税率 | 控除額 |
|---|---|---|
| 1,000円〜1,949,000円 | 5% | 0円 |
| 1,950,000円〜3,299,000円 | 10% | 97,500円 |
| 3,300,000円〜6,949,000円 | 20% | 427,500円 |
| 6,950,000円〜8,999,000円 | 23% | 636,000円 |
| 9,000,000円〜17,999,000円 | 33% | 1,536,000円 |
| 18,000,000円〜39,999,000円 | 40% | 2,796,000円 |
| 40,000,000円以上 | 45% | 4,796,000円 |
出典:国税庁「所得税の税率」(2026年1月現在)。上記は復興特別所得税(2.1%加算)を含まない基本税率です。
残業代と所得税の関係
残業代が増えると年間の課税所得が増加し、より高い税率区分に入る可能性があります。たとえば、課税所得が320万円の方が残業代で年間30万円増えた場合、330万円を超えた分(20万円)には20%の税率が適用されます。
計算例:税率区分が変わるケース
基本の課税所得:320万円(税率10%)
残業代による増加:+30万円 = 課税所得350万円
330万円までの分:330万円 × 10% - 97,500円 = 232,500円
330万円超の分(20万円):20万円 × 20% = 40,000円
残業代30万円に対する所得税増加分:約50,000円(実効税率 約16.7%)
4. 手取り額シミュレーション
月給と残業代から、税金・社会保険料の控除額と実際の手取り額を計算した3つのパターンを紹介します。所得税は源泉徴収税額表に基づく概算値、住民税は前年同等所得を前提とした推定値です。
月給30万円 + 残業代5万円のケース
一般的な中堅社員(年収420〜480万円想定)
支給額
控除額
手取り額
¥274,955
残業代5万円のうち約3.6万円が手取りに反映(手取り率 約71.5%)
月給40万円 + 残業代8万円のケース
管理職候補・専門職(年収600〜700万円想定)
支給額
控除額
手取り額
¥368,810
残業代8万円のうち約5.4万円が手取りに反映(手取り率 約67.4%)
月給25万円 + 残業代3万円のケース
若手社員・一般事務職(年収330〜380万円想定)
支給額
控除額
手取り額
¥222,460
残業代3万円のうち約2.2万円が手取りに反映(手取り率 約72.2%)
シミュレーションの前提条件
5. 標準報酬月額と残業代の関係
標準報酬月額とは
標準報酬月額とは、社会保険料の計算基準となる金額です。毎月の報酬(基本給+各種手当+残業代)を一定の等級に区分して決定されます。
重要なのは、残業代も標準報酬月額の算定に含まれるということです。特に4月・5月・6月の報酬が算定の基礎となるため、この期間の残業量が翌年度の社会保険料に大きく影響します。
算定の仕組み
STEP 1
4〜6月の報酬を集計
基本給+残業代+手当の合計
STEP 2
3ヶ月の平均を算出
合計額 ÷ 3 = 平均月額
STEP 3
等級に当てはめ
9月〜翌8月の保険料が決定
「4〜6月に残業すると損」は本当か?
4月・5月・6月に残業が多いと、標準報酬月額が上がり、9月から翌年8月までの社会保険料が高くなる可能性があります。
ただし、社会保険料が高くなることは必ずしも「損」ではありません。厚生年金保険料が高くなれば、将来受け取る老齢厚生年金の額も増えます。また、健康保険料が高くなれば、傷病手当金や出産手当金の額も増加します。
短期的な手取り額だけでなく、長期的な年金額も含めて判断することが重要です。
標準報酬月額の等級表(抜粋)
以下は、一般的な給与帯に該当する標準報酬月額の等級です。残業代込みの平均月額がどの等級に該当するかで、1年間の社会保険料が決まります。
| 報酬月額の範囲 | 標準報酬月額 | 厚生年金(本人負担/月) |
|---|---|---|
| 250,000〜270,000円 | 260,000円 | ¥23,790 |
| 270,000〜290,000円 | 280,000円 | ¥25,620 |
| 290,000〜310,000円 | 300,000円 | ¥27,450 |
| 310,000〜330,000円 | 320,000円 | ¥29,280 |
| 330,000〜350,000円 | 340,000円 | ¥31,110 |
| 350,000〜370,000円 | 360,000円 | ¥32,940 |
| 410,000〜430,000円 | 420,000円 | ¥38,430 |
| 470,000〜500,000円 | 500,000円 | ¥45,750 |
出典:日本年金機構「厚生年金保険料額表」(2026年度)。上記は抜粋です。
6. 手取りを最大化するポイント
各種控除を最大限活用する
残業代で年収が増えた年ほど、控除の効果が大きくなります。以下の控除を忘れず適用しましょう。
- -ふるさと納税:年収に応じた限度額まで実質2,000円で返礼品
- -iDeCo:掛金が全額所得控除(会社員は月23,000円まで)
- -医療費控除:年間10万円超の医療費がある場合
4〜6月の残業を意識する
標準報酬月額の算定期間を理解し、社会保険料の変動を予測しましょう。
- -4〜6月の残業が多いと社会保険料が年間で数万円変わる可能性
- -ただし年金額にも反映されるため一概に損とは言えない
- -業務上やむを得ない残業は無理に減らす必要はありません
給与明細を毎月確認する
控除額が正しいか、毎月の給与明細で確認する習慣をつけましょう。
- -残業代の計算が正しい割増率で行われているか
- -社会保険料の等級が適切かどうか
- -住民税の天引き額が前年の所得に見合っているか
年末調整を正確に行う
年末調整は1年間の所得税を精算する重要な手続きです。控除書類を正確に提出しましょう。
- -生命保険料控除:最大12万円の控除
- -地震保険料控除:最大5万円の控除
- -配偶者控除・扶養控除:該当する場合は必ず申告
残業代の手取り額を計算する
📊 残業代の手取り額シミュレーター
税金・社会保険料を引いた実際の手取りを計算
手取り額(概算)
¥233,823
手取り率: 67%
残業代¥50,000の実質手取り
約¥33,403
3. 社会保険料の内訳
労働者負担の社会保険料率
社会保険料は会社と労働者で折半(雇用保険は異なる負担割合)します。以下は労働者が負担する割合です。残業代を含む総支給額に対して、これらの保険料が天引きされます。
40歳以上の場合:介護保険料(約0.8%)が追加されます。40歳以上65歳未満の方は、上記合計に加えて約15.55%が社会保険料の負担率となります。
控除率の合計目安
所得税・住民税・社会保険料を合算した、残業代に対する実質的な控除率の目安です。年収帯によって所得税率が異なるため、控除率も変動します。
年収300〜400万円台
約28%
所得税5〜10% + 住民税10% + 社保約14.75%
年収500〜600万円台
約30%
所得税10〜20% + 住民税10% + 社保約14.75%
年収700万円以上
約33%
所得税20%〜 + 住民税10% + 社保約14.75%