公務員の残業代計算
公務員の残業代は「超過勤務手当」と呼ばれ、民間企業とは異なる計算ルールが適用されます。 国家公務員・地方公務員それぞれの計算方法を具体例つきで解説します。
公務員の残業代(超過勤務手当)とは
公務員が正規の勤務時間を超えて勤務した場合に支給される手当を「超過勤務手当」といいます。 民間企業の「残業代」に相当しますが、根拠法令や計算方法に違いがあります。
民間企業の残業代
- 根拠法:労働基準法
- 名称:時間外労働手当、残業手当
- 計算基準:基本給 + 諸手当
- 監督機関:労働基準監督署
公務員の残業代
- 根拠法:国家公務員法・地方公務員法
- 名称:超過勤務手当
- 計算基準:俸給月額(俸給表による)
- 監督機関:人事院・人事委員会
重要:公務員にも残業代は支給されます
国家公務員と地方公務員の違い
同じ「公務員」でも、国家公務員と地方公務員では適用される法令や制度に違いがあります。 超過勤務手当の計算においても、いくつかの重要な相違点があります。
国家公務員の超過勤務手当
国家公務員の超過勤務手当は「一般職の職員の給与に関する法律(給与法)」第16条および 「人事院規則九―九七(超過勤務手当)」に基づいて計算されます。
主な特徴
- 全国統一のルール:人事院規則により、全省庁で同じ計算方法が適用されます
- 俸給表に基づく計算:行政職俸給表(一)〜(二)、専門行政職俸給表など、職種に応じた俸給表で俸給月額が決定されます
- 所定勤務時間:1週間あたり38時間45分(1日7時間45分)が標準です
- 上限規制:原則月45時間、年360時間(他律的業務は月100時間未満、年720時間以内)
地方公務員の超過勤務手当
地方公務員の超過勤務手当は「地方公務員法」および 各自治体の「職員の給与に関する条例」に基づいて計算されます。
主な特徴
- 自治体ごとに異なるルール:条例により割増率や端数処理が自治体ごとに異なる場合があります
- 給料表に基づく計算:各自治体独自の給料表で給料月額が決定されます(国に準拠する自治体が多い)
- 所定勤務時間:多くの自治体が国に準じて1日7時間45分ですが、8時間の自治体もあります
- 端数処理:15分単位や30分単位で計算する自治体が多いですが、1分単位への移行も進んでいます
超過勤務手当の計算方法
公務員の超過勤務手当は、以下の計算式で算出します。民間企業の残業代計算と基本構造は同じですが、 「俸給月額」と「所定勤務時間」を使う点が特徴です。
基本計算式
超過勤務手当 = 俸給月額 ÷ 所定勤務時間 × 割増率 × 残業時間
所定勤務時間の計算
国家公務員の場合、1日の勤務時間は7時間45分です。 1か月あたりの平均所定勤務時間は以下のように算出します。
7時間45分 × 5日 × 52週 ÷ 12か月 = 約167.4時間
※ 自治体によって1日の勤務時間が8時間の場合は、月平均約173.8時間となります。 正確な時間数は各省庁・自治体の規則を確認してください。
公務員の割増率一覧
| 勤務の種類 | 割増率 | 備考 |
|---|---|---|
| 通常の超過勤務 | 125% | 月60時間以内 |
| 月60時間超の超過勤務 | 150% | 60時間を超えた部分 |
| 休日勤務 | 135% | 週休日・休日の勤務 |
| 深夜勤務(22時〜5時) | 25%加算 | 他の割増に加算される |
| 超過勤務 + 深夜 | 150% | 125% + 25% |
| 休日勤務 + 深夜 | 160% | 135% + 25% |
超過勤務の「何分単位」問題
公務員の超過勤務手当の計算単位は、国と地方で異なります。
- 国家公務員:原則1時間単位(30分以上は1時間に切り上げ、30分未満は切り捨て)
- 地方公務員:自治体により15分単位、30分単位、1時間単位と異なる
- 近年の動向:1分単位での計算に移行する自治体が増加傾向
総務省は適正な勤務時間管理を求めており、切り捨てによる不払いは問題視されています。 ご自身の自治体の条例や規則を必ず確認してください。
超過勤務手当を計算する
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俸給表から自動計算
超過勤務手当(月20時間の場合)
¥41,300
俸給月額
¥264,300
時間単価
¥1,652
超勤単価(×1.25)
¥2,065
年間概算
¥495,600
※ 行政職俸給表(一)の概算値。実際は地域手当等により異なります。
具体的な計算例
国家公務員(中央省庁・行政職)
前提条件
- 職種:行政職俸給表(一)適用、係長級
- 俸給月額:310,000円
- 所定勤務時間:月平均 167.4時間(7時間45分 × 月平均21.6日)
- 残業時間:月 30時間
計算ステップ
地方公務員(市役所・一般行政職)
前提条件
- 職種:一般行政職、主任級
- 給料月額:350,000円
- 所定勤務時間:月平均 167.4時間(7時間45分 × 月平均21.6日)
- 残業時間:月 20時間(うち深夜2時間)
計算ステップ
公立学校教員(教職調整額4%)
前提条件
- 職種:公立中学校教諭(教育職俸給表適用)
- 給料月額:320,000円
- 教職調整額:4%(給特法に基づく)
- 実際の時間外勤務:月約 45時間(ただし超過勤務手当は不支給)
教職調整額の計算
参考:もし民間と同じ計算をした場合
320,000円 ÷ 167.4h × 1.25 × 45h = 107,527円
差額:107,527円 - 12,800円 = 94,727円(本来得られるはずの金額との差)
教員の残業代問題
警察官(交替制勤務・深夜勤務あり)
前提条件
- 職種:都道府県警察・巡査部長(公安職俸給表適用)
- 給料月額:330,000円
- 所定勤務時間:月平均 167.4時間
- 残業時間:月 25時間(うち深夜10時間、休日8時間)
計算ステップ
※ 警察官は交替制勤務のため、深夜勤務が通常勤務に含まれる場合は深夜勤務手当のみが加算されます。 上記は所定外の残業・深夜・休日勤務の例です。
国家公務員・地方公務員・特別職の比較
公務員の種類によって、超過勤務手当の制度が大きく異なります。 以下の表で主な違いを整理します。
| 項目 | 国家公務員(一般職) | 地方公務員(一般職) | 特別職(国会議員・大臣等) |
|---|---|---|---|
| 根拠法令 | 給与法・人事院規則 | 地方公務員法・各自治体条例 | 特別職給与法等 |
| 超過勤務手当 | 支給あり | 支給あり | 制度なし |
| 給与体系 | 俸給表(全国統一) | 給料表(自治体ごと) | 法定額 |
| 所定勤務時間 | 7時間45分/日 | 7時間45分〜8時間/日 | 規定なし |
| 通常残業の割増率 | 125% | 125%(自治体による) | ― |
| 月60時間超の割増率 | 150% | 150%(自治体による) | ― |
| 計算単位 | 1時間単位(端数処理あり) | 15分〜1時間単位(自治体による) | ― |
| 残業上限 | 月45h・年360h(原則) | 条例による(国に準拠が多い) | 規定なし |
| 管理職の扱い | 俸給の特別調整額で対応 | 管理職手当で対応 | 該当なし |
※ 特別職には国会議員、大臣、裁判官、自衛官(一部)などが含まれます。 特別職は勤務時間の概念が異なるため、超過勤務手当の制度自体がありません。
公務員のサービス残業問題
制度上は超過勤務手当が支給されるとはいえ、公務員の間でも「サービス残業」は大きな問題となっています。 人事院の調査や各種報道によると、実際の残業時間と手当が支給される時間に乖離がある職場は少なくありません。
サービス残業が生じる原因
- 予算の制約:部署ごとに超過勤務手当の予算枠があり、超えると申請しにくい
- 職場文化:「上司より先に帰れない」「申請しづらい雰囲気」
- 自己申告制:客観的な記録がなく、自己申告に依存している職場がある
- 業務量の増加:定員削減と業務増大の板挟みで残業が常態化
改善に向けた取り組み
- 在庁時間の客観的把握:ICカードやPCログでの勤務時間記録の導入
- 上限規制の導入:2019年から国家公務員に残業上限規制を適用
- テレワークの活用:コロナ禍を契機に柔軟な働き方が拡大
- 人事院・総務省の指導:適正な勤務時間管理と手当支給の徹底を要請
適正な手当の支給は権利です
公務員の残業代に関するよくある質問
公務員の残業代は何分単位で計算されますか?
国家公務員と地方公務員で残業代の計算方法は違いますか?
公務員の残業代が出ないケースはありますか?
教員(公立学校の先生)に残業代は出ますか?
公務員の深夜勤務手当はどう計算しますか?
公務員の残業代に上限はありますか?
免責事項(クリックして開く)
本ページの情報は、公務員の超過勤務手当に関する一般的な解説であり、法的助言を提供するものではありません。 実際の手当額は、所属する省庁・自治体の規則、俸給表の等級・号俸、各種手当の有無等によって異なります。
計算例はあくまで概算であり、端数処理や特別な手当の加算・控除は考慮していません。 正確な金額については、所属先の人事・給与担当部署にお問い合わせください。
本ページの情報は2026年2月時点のものであり、法令や規則の改正により変更される場合があります。 最新の情報は人事院、総務省、各自治体の公式サイトでご確認ください。