国家公務員・地方公務員対応

公務員の残業代計算

公務員の残業代は「超過勤務手当」と呼ばれ、民間企業とは異なる計算ルールが適用されます。 国家公務員・地方公務員それぞれの計算方法を具体例つきで解説します。

俸給月額ベースの計算割増率を詳しく解説具体的な計算例4パターン

公務員の残業代(超過勤務手当)とは

公務員が正規の勤務時間を超えて勤務した場合に支給される手当を「超過勤務手当」といいます。 民間企業の「残業代」に相当しますが、根拠法令や計算方法に違いがあります。

民間企業の残業代

  • 根拠法:労働基準法
  • 名称:時間外労働手当、残業手当
  • 計算基準:基本給 + 諸手当
  • 監督機関:労働基準監督署

公務員の残業代

  • 根拠法:国家公務員法・地方公務員法
  • 名称:超過勤務手当
  • 計算基準:俸給月額(俸給表による)
  • 監督機関:人事院・人事委員会
重要:公務員にも残業代は支給されます
「公務員は残業代が出ない」という誤解がありますが、法律上、公務員にも超過勤務手当を支給する義務があります。 ただし、管理職手当受給者や教員(給特法適用)など、例外的に支給されない職種もあります。

国家公務員と地方公務員の違い

同じ「公務員」でも、国家公務員と地方公務員では適用される法令や制度に違いがあります。 超過勤務手当の計算においても、いくつかの重要な相違点があります。

国家公務員の超過勤務手当

国家公務員の超過勤務手当は「一般職の職員の給与に関する法律(給与法)」第16条および 「人事院規則九―九七(超過勤務手当)」に基づいて計算されます。

主な特徴

  • 全国統一のルール:人事院規則により、全省庁で同じ計算方法が適用されます
  • 俸給表に基づく計算:行政職俸給表(一)〜(二)、専門行政職俸給表など、職種に応じた俸給表で俸給月額が決定されます
  • 所定勤務時間:1週間あたり38時間45分(1日7時間45分)が標準です
  • 上限規制:原則月45時間、年360時間(他律的業務は月100時間未満、年720時間以内)

地方公務員の超過勤務手当

地方公務員の超過勤務手当は「地方公務員法」および 各自治体の「職員の給与に関する条例」に基づいて計算されます。

主な特徴

  • 自治体ごとに異なるルール:条例により割増率や端数処理が自治体ごとに異なる場合があります
  • 給料表に基づく計算:各自治体独自の給料表で給料月額が決定されます(国に準拠する自治体が多い)
  • 所定勤務時間:多くの自治体が国に準じて1日7時間45分ですが、8時間の自治体もあります
  • 端数処理:15分単位や30分単位で計算する自治体が多いですが、1分単位への移行も進んでいます

超過勤務手当の計算方法

公務員の超過勤務手当は、以下の計算式で算出します。民間企業の残業代計算と基本構造は同じですが、 「俸給月額」と「所定勤務時間」を使う点が特徴です。

基本計算式

超過勤務手当 = 俸給月額 ÷ 所定勤務時間 × 割増率 × 残業時間

俸給月額:俸給表で決まる基本給(諸手当は含まない)
所定勤務時間:1か月の平均勤務時間数

所定勤務時間の計算

国家公務員の場合、1日の勤務時間は7時間45分です。 1か月あたりの平均所定勤務時間は以下のように算出します。

7時間45分 × 5日 × 52週 ÷ 12か月 = 約167.4時間

※ 自治体によって1日の勤務時間が8時間の場合は、月平均約173.8時間となります。 正確な時間数は各省庁・自治体の規則を確認してください。

公務員の割増率一覧

勤務の種類割増率備考
通常の超過勤務125%月60時間以内
月60時間超の超過勤務150%60時間を超えた部分
休日勤務135%週休日・休日の勤務
深夜勤務(22時〜5時)25%加算他の割増に加算される
超過勤務 + 深夜150%125% + 25%
休日勤務 + 深夜160%135% + 25%
超過勤務の「何分単位」問題

公務員の超過勤務手当の計算単位は、国と地方で異なります。

  • 国家公務員:原則1時間単位(30分以上は1時間に切り上げ、30分未満は切り捨て)
  • 地方公務員:自治体により15分単位、30分単位、1時間単位と異なる
  • 近年の動向:1分単位での計算に移行する自治体が増加傾向

総務省は適正な勤務時間管理を求めており、切り捨てによる不払いは問題視されています。 ご自身の自治体の条例や規則を必ず確認してください。

超過勤務手当を計算する

🏛️ 公務員 超過勤務手当シミュレーター

俸給表から自動計算

時間

超過勤務手当(月20時間の場合)

¥41,300

俸給月額

¥264,300

時間単価

¥1,652

超勤単価(×1.25)

¥2,065

年間概算

¥495,600

※ 行政職俸給表(一)の概算値。実際は地域手当等により異なります。

具体的な計算例

例1

国家公務員(中央省庁・行政職)

前提条件

  • 職種:行政職俸給表(一)適用、係長級
  • 俸給月額:310,000円
  • 所定勤務時間:月平均 167.4時間(7時間45分 × 月平均21.6日)
  • 残業時間:月 30時間

計算ステップ

1. 1時間あたり単価:310,000円 ÷ 167.4時間 = 1,851円
2. 割増単価:1,851円 × 1.25 = 2,314円
3. 超過勤務手当:2,314円 × 30時間 = 69,420円
月の超過勤務手当
69,420円
例2

地方公務員(市役所・一般行政職)

前提条件

  • 職種:一般行政職、主任級
  • 給料月額:350,000円
  • 所定勤務時間:月平均 167.4時間(7時間45分 × 月平均21.6日)
  • 残業時間:月 20時間(うち深夜2時間)

計算ステップ

1. 1時間あたり単価:350,000円 ÷ 167.4時間 = 2,090円
2. 通常残業分:2,090円 × 1.25 × 18時間 = 47,025円
3. 深夜残業分:2,090円 × 1.50 × 2時間 = 6,270円
4. 合計:47,025円 + 6,270円 = 53,295円
月の超過勤務手当
53,295円
例3

公立学校教員(教職調整額4%)

前提条件

  • 職種:公立中学校教諭(教育職俸給表適用)
  • 給料月額:320,000円
  • 教職調整額:4%(給特法に基づく)
  • 実際の時間外勤務:月約 45時間(ただし超過勤務手当は不支給)

教職調整額の計算

教職調整額:320,000円 × 4% = 12,800円/月
教職調整額(定額支給)
12,800円/月

参考:もし民間と同じ計算をした場合

320,000円 ÷ 167.4h × 1.25 × 45h = 107,527円

差額:107,527円 - 12,800円 = 94,727円(本来得られるはずの金額との差)

教員の残業代問題
教職調整額4%は月約8時間分の残業代に相当しますが、実際の時間外勤務は月平均45時間以上との調査結果もあります。 この大きな乖離が「教員の働き方改革」で議論されており、2026年現在、制度の見直しが進められています。
例4

警察官(交替制勤務・深夜勤務あり)

前提条件

  • 職種:都道府県警察・巡査部長(公安職俸給表適用)
  • 給料月額:330,000円
  • 所定勤務時間:月平均 167.4時間
  • 残業時間:月 25時間(うち深夜10時間、休日8時間)

計算ステップ

1. 1時間あたり単価:330,000円 ÷ 167.4時間 = 1,971円
2. 通常残業分:1,971円 × 1.25 × 7時間 = 17,246円
3. 深夜残業分:1,971円 × 1.50 × 10時間 = 29,565円
4. 休日勤務分:1,971円 × 1.35 × 8時間 = 21,287円
5. 合計:17,246 + 29,565 + 21,287 = 68,098円
月の超過勤務手当等合計
68,098円

※ 警察官は交替制勤務のため、深夜勤務が通常勤務に含まれる場合は深夜勤務手当のみが加算されます。 上記は所定外の残業・深夜・休日勤務の例です。

国家公務員・地方公務員・特別職の比較

公務員の種類によって、超過勤務手当の制度が大きく異なります。 以下の表で主な違いを整理します。

項目国家公務員(一般職)地方公務員(一般職)特別職(国会議員・大臣等)
根拠法令給与法・人事院規則地方公務員法・各自治体条例特別職給与法等
超過勤務手当支給あり支給あり制度なし
給与体系俸給表(全国統一)給料表(自治体ごと)法定額
所定勤務時間7時間45分/日7時間45分〜8時間/日規定なし
通常残業の割増率125%125%(自治体による)
月60時間超の割増率150%150%(自治体による)
計算単位1時間単位(端数処理あり)15分〜1時間単位(自治体による)
残業上限月45h・年360h(原則)条例による(国に準拠が多い)規定なし
管理職の扱い俸給の特別調整額で対応管理職手当で対応該当なし

※ 特別職には国会議員、大臣、裁判官、自衛官(一部)などが含まれます。 特別職は勤務時間の概念が異なるため、超過勤務手当の制度自体がありません。

公務員のサービス残業問題

制度上は超過勤務手当が支給されるとはいえ、公務員の間でも「サービス残業」は大きな問題となっています。 人事院の調査や各種報道によると、実際の残業時間と手当が支給される時間に乖離がある職場は少なくありません。

サービス残業が生じる原因

  • 予算の制約:部署ごとに超過勤務手当の予算枠があり、超えると申請しにくい
  • 職場文化:「上司より先に帰れない」「申請しづらい雰囲気」
  • 自己申告制:客観的な記録がなく、自己申告に依存している職場がある
  • 業務量の増加:定員削減と業務増大の板挟みで残業が常態化

改善に向けた取り組み

  • 在庁時間の客観的把握:ICカードやPCログでの勤務時間記録の導入
  • 上限規制の導入:2019年から国家公務員に残業上限規制を適用
  • テレワークの活用:コロナ禍を契機に柔軟な働き方が拡大
  • 人事院・総務省の指導:適正な勤務時間管理と手当支給の徹底を要請
適正な手当の支給は権利です
公務員であっても、実際に働いた時間に対する超過勤務手当の支給を受けることは正当な権利です。 サービス残業が常態化している場合は、職員組合や人事担当部署への相談を検討してください。

公務員の残業代に関するよくある質問

公務員の残業代は何分単位で計算されますか?

国家公務員の超過勤務手当は原則として1時間単位で計算されます。ただし、人事院規則により30分以上の端数は1時間に切り上げ、30分未満は切り捨てとなります。地方公務員は自治体の条例によって異なり、15分単位30分単位で計算する自治体が多いです。近年は1分単位での計算に移行する自治体も増えています。なお、1分単位で計算しないことは厳密には労働基準法違反にあたる可能性があり、総務省も適正な管理を求めています。

国家公務員と地方公務員で残業代の計算方法は違いますか?

基本的な計算式(俸給月額 ÷ 所定勤務時間 × 割増率 × 残業時間)は同じですが、割増率の設定端数処理に違いがあります。国家公務員は人事院規則で全国統一の割増率が定められていますが、地方公務員は各自治体の条例で独自に定めることができます。また、国家公務員は俸給の特別調整額(管理職手当)を受ける職員は超過勤務手当の対象外となりますが、地方公務員は自治体により扱いが異なります。

公務員の残業代が出ないケースはありますか?

はい、いくつかのケースがあります。管理職手当(俸給の特別調整額)を受ける職員は超過勤務手当の対象外です。また、教員は教職調整額(俸給月額の4%)が支給される代わりに、原則として超過勤務手当は支給されません(給特法)。さらに、予算の制約により、実際の残業時間に見合った手当が支給されない「サービス残業」が問題となっています。ただし、これは法的には不適切であり、改善が求められています。

教員(公立学校の先生)に残業代は出ますか?

公立学校の教員には「公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法(給特法)」が適用されます。この法律により、教員には俸給月額の4%が「教職調整額」として一律支給される代わりに、時間外勤務手当(残業代)は原則支給されません。ただし、超勤4項目(生徒の実習、学校行事、職員会議、非常災害等)に該当する場合のみ、超過勤務を命じることができます。2026年現在、この制度の見直し議論が進んでおり、教職調整額の引き上げや新たな手当の創設が検討されています。

公務員の深夜勤務手当はどう計算しますか?

公務員が22時から翌5時までの間に勤務した場合、深夜勤務手当が支給されます。国家公務員の場合、勤務1時間あたりの給与額に25%を乗じた額が深夜勤務手当として加算されます。超過勤務と深夜勤務が重なる場合は、時間外の割増率(通常125%)に深夜割増(25%)が加算され、合計150%(1.5倍)となります。休日の深夜勤務の場合は、休日割増(135%)に深夜割増(25%)で合計160%となります。

公務員の残業代に上限はありますか?

法律上の残業代の金額に上限はありませんが、残業時間自体に上限が設けられています。2019年4月から国家公務員には人事院規則により、原則月45時間・年360時間の上限が設定されました(他律的業務の多い部署は月100時間未満・年720時間以内等の例外あり)。地方公務員も同様の上限規制を条例で定めています。ただし、大規模災害や国会対応などの特例もあります。重要なのは、実際に働いた時間に対する残業代は全額支給が原則であり、予算不足を理由にした不払いは認められません。
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本ページの情報は、公務員の超過勤務手当に関する一般的な解説であり、法的助言を提供するものではありません。 実際の手当額は、所属する省庁・自治体の規則、俸給表の等級・号俸、各種手当の有無等によって異なります。

計算例はあくまで概算であり、端数処理や特別な手当の加算・控除は考慮していません。 正確な金額については、所属先の人事・給与担当部署にお問い合わせください。

本ページの情報は2026年2月時点のものであり、法令や規則の改正により変更される場合があります。 最新の情報は人事院、総務省、各自治体の公式サイトでご確認ください。

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